国際離婚
国際離婚とは
国際離婚とは、日本人と日本国籍を持たない外国人が国際結婚したが、その後何らかの理由で離婚に至った場合を言います。今後、日本社会の国際化に伴い、国際結婚が増加することが確実視されています。その結果として国際離婚も増加すると言われています。国際離婚は、日本人同士の一般的な離婚より煩雑で面倒だと言われています。それの理由を以下ご説明いたします。
一般的な国内離婚と国際離婚の相違点
まず、日本人同士のカップルの場合、本人同士の合意の下、離婚届を役所に提出すれば離婚できます。俗に言う「紙切れ一枚の関係」です。とりあえずは、簡単な手続きで終了します。
これに対して、国際離婚の場合、
① |
適用される法律の問題 |
② | 外国人との離婚の手続の問題 |
③ |
申子供の国籍や戸籍の問題等芋づる式に疑問点や問題点が出てきます。 |
国際離婚に適用される法律
通常の日本人同士の国内離婚と異なり、国際離婚の場合、必ずしも日本の法律に従って離婚するわけではありません。 国際離婚の際にどの国の法律に従うかについては、具体的には以下のように決まっています。
①
夫婦の本国法(国籍のある国の法律)が同一であるときには、その法律
例) イタリア在住の日本人同士の夫婦が離婚する場合には、日本の法律が適用されます。
②
同一の本国法がない場合、夫婦の常居地法が同一である場合には、その法律 例) 日本に住んでいるイタリア人と日本人の夫婦が離婚する場合には、二人が住んでいる日本の法律が適用されます。 仮に、その夫婦がイタリアに住んでいる場合には、イタリアの法律が適用されます。
③
同一の本国法や常居地法がない場合、夫婦に最も密接な関係のある地の法律
例) イタリア人の夫が日本に住んでいて、日本人の妻がフランスに住んでいる場合でも、日本が夫婦に密接関連している国になりますので日本の法律に準じます。 また、イタリア人と日本人の夫婦が両者の国籍以外の国、例えば韓国に住んでいる場合、その夫婦が住んでいる韓国の法律が適用されます。
④
夫婦の一方が日本に常居所をもつ日本人のときは、日本の法律
例) 日本人が日本に住んでいれば、日本の法律に準じて離婚することができるということです。
このように、国際離婚に適用される法律はケースごとに個別具体的に定められています。
なお、イタリア人との離婚を希望する場合は、どの様な方式で結婚したかが問題になることが多々あります。キリスト教国では、離婚を認めない傾向にあるので、「2年間の別居」が要件になる場合もあります。
手続き
国際離婚の場合、外国人配偶者が、日本で離婚届けを出して離婚手続きが完了しても、離婚後に本国に帰る場合には、本国で離婚の届出の手続きを別途する必要があります。以下が大変重要な点ですが、日本国内で法的に有効な離婚手続きを行ったとしても、外国人配偶者が本国に帰った時、その国で日本での離婚が有効と認められるか否かはその国の法律によるものとされています。したがって、国際離婚の場合、日本で離婚届を提出して離婚しても、本国で離婚が成立するとは限らないのです。
例えば、日本で認められ、大半の方が利用している協議離婚の制度は、諸外国では一部の国にしか認められていません。 ですから、日本で裁判所を通して調停・審判・裁判の方法で離婚をしないと、外国人配偶者の本国では、日本での離婚が有効にならないケースがあることに注意が必要です。
では、次に、外国で外国人と離婚をした場合の手続きはどうなるのでしょうか? この場合、外国で離婚が成立しても、日本人配偶者は日本側への離婚届出の手続きが必要になります。離婚の届出は、在外日本公館か日本の市区町村役場に提出します。なお、国際離婚後の氏については、日本人同士の離婚の場合は、原則として元の氏に戻りますが、外国人との離婚手続を行った場合、自動的に元の氏に戻るわけではありません。国際離婚後に氏を変更する場合には、別途届出が必要になります。
離婚後の在留資格
国際離婚をした外国人は、離婚後の在留資格が大きな問題となります。 まず、「日本人の配偶者等」の在留資格(配偶者ビザ)で日本に在留している外国人は、離婚すれば日本人配偶者でなくなります。 ですから、離婚後は配偶者ビザの在留期間更新許可を受けることはできません。 そのため、多くのケースで「定住者ビザ」への変更申請を行っています。
ただし、国際離婚後の定住者ビザが許可されるかどうかは結婚後の生活状況、素行、実質的な婚姻生活期間等を総合的に判断して決められます。離婚したからといって定住者ビザで在留資格をもらうことは簡単ではありません。
具体的な手続き(中国籍の方との離婚)
現在増えているのが、中国の方と日本人の離婚です。中国では、協議離婚が認められているので、裁判を起こす必要がありません。では、具体的に離婚手続きを見ていきましょう。
① |
離婚届を役所に提出する。 |
② | 離婚の事実が記載された戸籍謄本、離婚受理証明書を取得する。 |
③ | ②の書類を外務省に提出し、認証を受ける。外務省での認証に掛かる費用は無料です。 |
④ | 認証を受けた後、その書類を中国大使館に提出し、認証を受ける。中国大使館で 認証を受ける場合、費用が掛かります。通常の認証であれば、6000円前後掛かります。 |
⑤ | 外務省、中国大使館で認証を受けた書類を中国の役所に提出する。省によっては、 現地に本人が行かなければならない所、現地の弁護士を自分の代理人に立てられる 所があり、土地によって制度が違う場合があるので、事前の確認が必要です。 |
その他注意点
特に注意しなければならないのは、離婚相手の国ではどの様な離婚手続きが認められているかを確認することです。外国の多くは、自国の離婚要件を規定しているので、それに合った方式を取る必要があります。必ず日本にある外国大使館に確認を取る必要があります。日本の方式で離婚が国内で認められたとしても、外国でも離婚が認められないと、離婚は不完全にしか成立していないのです。