遺言 ・ 相続
日本は、高齢化社会から高齢社会に突入しました。高齢者の人口は年々増加しています。ご高齢の方々とお話をしていると、年金や健康問題の次に意外に多いのが、「財産を子供や孫にどう残せばいいのか?」という相談です。「親は死んでも子に財産を残す」という名言通りみなさん必死に悩んでおられます。
そのような相談を受けたとき、私は、遺言の作成をお勧めしています。多くの方が、「生きているのに、死んだ後のことを考えるのは縁起でもない」「うちの子供はみんな仲良しだからそんなものいらないよ」「面倒くさいからいらないよ」等とおっしゃられます。しかし、遺言作成には、これらのマイナスイメージを拭い去る効果があります。最大の効果は、「死後の親族間の金銭トラブルの防止」です。
遺言を作成しなかったがために、泥沼のトラブルに発展することは、みなさんの想像以上に多いです。トラブルは、精神的・肉体的にも非常に大変です。これが原因で親族が絶縁状態になってしますケースもあります。テレビドラマの比ではありません。トラブルに発展する可能性を考えるのなら、前もって遺言を作成することをお勧めします。遺言の作成は思ったより面倒ではありません。以下、遺言の種類や流れを簡単にまとめましたので参考にしてください。
デジタル化の社会の盲点
twitter、facebook、ブログ等々最近は、個人で情報を発信する時代になりました。皆さんもどれか一つ位はやっているのではないでしょうか?これらを通して昔の友人、新たな仲間、恋人をみつけた方は非常に多いと思います。
「これが何故相続と関係あるのか?」
この様な疑問が当然出てくるかと思います。普通、相続と言えば、モノとカネを中心に考え、これらに焦点を当てて考えてしまいます。しかし、皆さん忘れがちなのが、「ヒト」の問題です。これは、私が経験していることなので、以下私の経験談になります。
私の父が亡くなったときのことです。父は、長期間単身、台湾で生活していたので、父の情報を得ようとインターネットで名前を検索していました。すると、最初のページの下の方にfacebookの欄を見つけました。「まさか」と思いクリックをすると、父が写っていました。父は、人気者だったらしく、友達登録が複数ありました。
私は「facebookの仲間に連絡を取り亡くなったことを伝えたい」と思いました。しかし、このデジタル社会の壁に阻まれてしまいました。そうです、父のfacebookにログインできないのです。IDやパスワードが分からないのです。父と連絡を取り合っていた仲間は、日を追う毎に少なくなっていきました。そのとき思いました、「IDやパスワードを知っていたら、全員に連絡をすることができたのに・・・・」と。
インターネットと切り離して生活をすることが難しくなった現代では、IDやパスワードを無くしてしまうと非常に不便を強いられます。生きているなら、再発行という手段がありますが、本人が亡くなっていては何もできません。生きている内からそれらの管理も財産の一部として行わなければなりません。私はそう痛感しました。
繰り返しになりますが、財産は、モノとカネだけではありません。経済と同じようにヒトも当然含みます。むしろ、この中で一番重要かもしれません。彼らと連絡を取ることにより、生前の故人の別の顔を知ることが出来るかもしれません。
この様に、相続がおこるとこれからはネット社会のことも加味しながら動かなければなりません。当事務所では、時代の流れに沿った解決法を提案しております。
また、私は両親の相続の手続を経験しているので、相続を仕事として行っている同業者と異なり、自己の経験に裏打ちされた痒いところに手の届くお手伝いが出来ます。一人で悩まずご相談下さい。
種類について
遺言には、自分で作成する「自筆証書遺言」、公証人に作成してもらう「公正証書遺言」、内容を秘密にできる「秘密証書遺言」の3種類があります。当事務所では、この3種類に作成のサポートを行います。
遺言 ・ 相続の流れ
① 遺産の調査・財産目録の作成
② 相続人の調査・依頼の同意書作成
③ 相続人間の協議
④ 遺産分割協議書の作成
⑤ 遺産分割の実施
* 遺産分割協議書とは、遺産の調査と相続人の確定後に相続人間で行われた
遺産分割協議で取り決められた内容を書面にしたものです。
以上が遺言相続の簡単な流れです。当事務所では、後にトラブルが発生しないように満足がいくまで相談に乗り、書類を作成いたします。尚、分配や名義変更では税金や登記の問題が生じますが、これらは、業務提携をしている税理士や司法書士をご紹介いたしますので、お手数はお掛けいたしません。円満解決のために、是非ご利用ください。
相続の放棄
■ はじめに
放棄は、「放棄します」と言えばそれで終わりになる程単純なものではありません。放棄は、多少面倒くさい部分がありますが、そこまで複雑なシステムではありません。以下、重要な点のみをまとめました。
■ 相続放棄を選択するとき
・ マイナスの財産が明らかに多い場合
・ 相続争いなどに巻き込まれたくない場合
プラスの財産があったとしても放棄をすることは可能である点に注意して下さい。
■ 相続放棄の手続き
「一体いつまでに放棄するの??」という疑問が出てくるでしょう。
放棄では、この期間が非常に重要になってきます。この期間の経過の有無で状況が一変すると言っても過言ではありません。放棄のヤマだと言えます。放棄は、各相続人が「自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内」にしなくてはなりません。
気をつけて頂きたいのは、「知った日から3ヶ月以内」であって、「死亡した日から3ヶ月以内」ではない点です。次に、手続をする場所ですが、これは、家庭裁判所(被相続人の住所地の家庭裁判所または、相続開始地の家庭裁判所)で行います。
家庭裁判所に、「相続放棄申述書」を提出します。これは、相続放棄を行う相続人の情報を記入した申請書です。氏名や放棄理由を記載します。最後に結果の通知ですが、家庭裁判所に放棄をすることが認められれば、「相続放棄申述受理通知書」が交付(送付)されます。手続は、これだけです。
意外と思われるかもしれませんが、手続は簡素化されています。それだけ放棄をする人が多いということかもしれません。注意点ですが、この期間内に申述しなかった場合は、単純承認したものとみなされます。
相続放棄は各相続人が「単独」で行うこととなります。仮に、3ヶ月以内に相続放棄をするかどうか決めることが出来ない特別の事情がある場合は、申請することによりこの3ヶ月の期間を延長してもらえる場合があります。
■ 放棄以外の方法
放棄以外の相続人の意思表示のパターンは他に単純承認と限定承認の2つあります。
・単純承認とは・・相続人が被相続人(故人)の財産(遺産)をすべて相続することです。
財産には、プラスの財産とマイナスの財産も含まれますので、マイナスの財産の
ほうが 多い場合は、相続人が債務を返済していかなければならなくなります。
・限定承認とは・・被相続人(故人)の財産を相続はするが、マイナスの財産が
多くてもプラスの財産の範囲内でしか相続せず、プラスの財産の範囲内でしか
相続しないので、相続人の財産から債務を返済していくことはありません。
◎ プラスの財産が多い場合
マイナスの財産を返済し、残った財産を相続することができる。
◎ マイナスの財産が多い場合
プラスの財産の範囲内で債務を返済することで、債務の返済を終わらせることが
できる。「プラスの財産が多いかマイナスの財産が多いか分からない」場合に
選択する手続きが限定承認です。放棄のとき気をつけなければならないのが、
単純承認と見なされる場合がある点です。相続放棄したとしても、以下に
該当する場合は、単純承認したものとみなされますので注意しましょう。
① 相続人が相続財産の全部、または一部を処分した。
② 相続人が相続放棄をした後であっても、相続財産の全部、または一部を
隠匿したり、消費したり、わざと財産目録に記載しなかった。
※ 葬儀費用を相続財産から支払った場合は、単純承認とはなりません。
■ 相続放棄に必要となる主な書類等
1. 相続放棄申述書(家庭裁判所にあります)
2. 申述人(相続人)の戸籍謄本
3. 被相続人の戸籍謄本等(除籍簿)
4. 被相続人の住民票の除票
5. 収入印紙(1人800円)
6. 返信用の郵便切手(1人400円分)
7. 申述人(相続人)の認印
相続放棄申述書を家庭裁判所に提出後、1週間ほどで家庭裁判所から「相続放棄の申述についての照会書」が郵送されてきます。
■ 相続放棄の撤回
家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出し、相続放棄が認められ、「相続放棄陳述受理証明書」が交付された場合は、原則的に相続放棄の撤回は認められません。例外的な場合もありますが、要件が非常に厳しいので、ここは、「相続の放棄の撤回はまず無理だ」と覚えておいた方がいいでしょう。
遺産分割協議書作成
■ 遺産分割協議書とは
遺言などがない場合は、遺産分割協議した内容を書面にします。
遺産相続は、被相続人の死亡と同時に自動的に相続人に移転します。その個々の財産を各相続人の所有とするためには、「遺産の分割」をして名義を変える手続が必要です。
ただし、協議は相続人全員でしなければならず、一人でも欠いた協議は無効となります。
■ 遺産分割協議書をつくるメリット
1 | 後日の争いを防止する。 |
親族間でいろいろな論争になりかねないので、書面にしておくことが、後々の争いの 防止になります。 |
|
2 |
新たな遺産が見つかったときの方法を決めておく。 |
新たな遺産が見つかった場合に再度、遺産分割の話し合いを相続人全員が集まって するのは大変なので、遺産分割協議書に最初から 記載しておきます。もし、新たに財産が見つかった時に再度話し合いをしたいので あれば、「相続人全員であらためて協議する」と書く こともできます。 |
■ 遺産の分け方
1 | 現物分割 |
親族間でいろいろな論争になりかねないので、書面にしておくことが、後々の争いの 防止になります。 |
|
2 | 代償分割 |
個々の財産を相続人に配分する方法で、最も一般的な方法です。 例:土地家屋の相続は配偶者に、株式などの有価証券は長女に、預貯金・現金は長男が 相続するという方法。 |
|
3 | 換価分割 |
後日の争いを防止する。相続した土地・家屋などの不動産を売却し、その相続不動産の 売却代金を分割する方法。 |
|
4 |
共有分割 |
相続した不動産などの土地・家屋の全部または一部を数名の相続人で共有にするという方法。 注意:将来その相続で取得した不動産を売却するような場合に、トラブルになるケースがある。 |
■ 協議が成立しなかったとき
相続人間での協議が調わないときや、初めから協議に加わらない者がいるときなど相続のトラブルは、家庭裁判所に遺産の分割を申し立てることができます。
■ 協議が成立したら
相続人間で分割協議がまとまったら、遺産分割協議書を作成します。記載内容は、サンプルを参照してください。
相続の基本知識
相続は、以下の内容を知っているのといないのとでは全く異なるので、一度目を通して下さい。
■ 法定相続のルール
① 配偶者は常に相続人になります
② 配偶者以外の人たちには相続順位があります。
第一順位 子供
第二順位 親 子供がいない場合相続人になる
第三順位 兄弟姉妹 子供も親もいない場合相続人になる
法定相続人 | 法定相続分 | 法定相続人 |
法定相続分 | |
第一順位 | 配偶者 | 1/2 | 子供 (養子、胎児を含む) |
1/2 |
第二順位 | 配偶者 | 2/3 | 親 (養父母を含む) |
1/3 |
第三順位 |
配偶者 | 3/4 | 兄弟姉妹 |
1/4 |
■ プラスの財産
財産の種類 |
調査方法 |
不動産(土地・建物) | 保険証券等 |
借地権、借家権、賃借権、 地上権、温泉権等 |
固定資産税通知書や権利書、市区町村発行の名寄せ等 |
現金、小切手、預貯金等 | 自宅や別荘内を徹底的に調査。カードや通帳から判断する。 ない場合には、金融機関に出向いて残高証明書や名寄せを 取得する。 |
株式、公社債、投資信託等の 有価証券、特許権、著作権、 実用新案権等の無体財産権 |
故人宛の手紙や金融機関の口座の記録、通帳等、貸金庫に 株券があるかどうか調べる。 |
宝石、貴金属、美術品、自動車等 の動産 |
自宅や別荘、勤務先、入院先、貸金庫 |
ゴルフ会員権 | 自宅や別荘、勤務先、入院先、貸金庫 |
電話加入権 |
NTTに問い合わせる |
故人が受取人になっている 生命保険金 |
保険証券等 |
■ マイナスの財産
財産の種類 |
調査方法 |
借金 (住宅ローン、カードローン、 クレジットカード会社への 支払い等) |
クレジットカード、故人宛の手紙や請求書、 全部事項証明書の抵当権の記載等から調査 |
未払いの税金 (固定資産税、所得税、 住民税等) |
故人宛の手紙や督促状 |
入院費、治療費 | 入院先や通院先の病院に問い合わせ |
保証債務 |
故人宛の手紙や請求書 |
■ 相続財産に含まれないもの
死亡退職金 | 死亡退職金の目的は、退職者と一緒に生活していた人 の暮らしを安定させるものであり、遺産分割になじま ないからです。 |
遺族年金 | 遺族に支払われるものです。 |
生命保険金請求権 | 受取人が故人以外の人になっている場合、相続財産 には含まれません。 |
一身専属権 | 扶養請求権、生活保護受給権、国家資格など |
使用貸借権 | タダで借りられる権利は相続できません 。 |
仏壇、位牌、墓地、墓石などの 祭祀財産 |
|
香典、弔慰金、葬儀費用 |
|
香典、弔慰金、葬儀費用 |
身元保証、信用保証、根保証債務など |